輝かしき富校生の一年をここに著す。まばゆいばかりである。ああ、富校生っていいな。
〜春〜 |
〜夏〜 |
〜秋〜 |
〜冬〜 |
〜春〜 |
三月中旬。すべての富校生が通ってきた難関である。倍率はおおむね1倍少々であり、他県とくらべると門は広い。
この日のために日々勉強に励み、受験生の楽しさを満喫してきたわけだが、富校に入ったあとの方が楽しさ100倍であることはあまり知らないでいる。
なお、この間富校生たちは2日間ものおやすみにハッピーであり、懐かしきあのころを思いながら「ああ、中学生っていいなあ。がんばれ」などと親心にひたるわけである。
ふつう、合格発表の前日。とはいえ、あんまりあしたのことなんか考えずに、とりあえず笑顔で卒業しちゃうのである。おめでとう。
そんななか、中学の先生はハラハラだったりする。安心させてあげなければならない。
入学試験初日の一週間後。12:30発表。直前には正門のあたりに引かれたロープの前は中学生とその保護者でいっぱいになる。むしろ保護者の方が気合いが入っていることもある。みんなドキドキである。あまりドキドキしていない人もまじっており、そんなのはたいていビラ配りである。ものすごく楽しそうな人もおり、そんなのはたいていミーハーな富校の女の子たちである。
ロープがとられると同時にわっと走り出す。受験番号はふつうミルクホール前に掲げられている。富校の杜の日記記者も取材をしており、いい顔をして写ったら富校の杜表紙写真に掲載される。また各種マスコミも集まっており、誰にもまけない満面の笑顔で3分もそこで喜んでいれば、その日のニュースでの放送は堅い。
合格発表後の最初の土曜日。合格から1週間も経っておらず気分もウキウキの頃である。ああ、ここで高校生活を送るんだ、なんて思ってぼ〜っとしていると大切なことを聞きのがしてしまい、高校生活が始まっていきなりこけることになる。とはいえ、それを利用して近くの人と仲良くなっておくのはみごとな手である。ただし、この説明会で言われることは並の量ではない。近年は保護者同伴で開かれている。新入生が説明を受けている間、保護者には保護者向けの説明が行われる。
怒濤の宿題も登場する。数学・英語・国語は市販の問題集。そして富校生としての決意を語る作文である。数学は高校の教科書の予習20ページ分もしっかりと入っている。春休みは思い切り遊ぶぞ、なんて言ってた人も、この日突如として、やらなきゃいけないことでスケジュールが埋まる。
また、この日には芸術と武道の選択を決定しなければならない。すなわち音楽・美術・書道と、柔道・剣道・ダンスである。登録用紙には第一希望第二希望を書いて提出となる。この際、「今日は家に14時までに家に待機していてください。」と指示される。それまでに電話がかかってこなければ、第一希望が通ったということ。電話がかかってきたら「第二希望でいい?ごめんね;」ということ。
その後、体操服や体育館シューズ、カッパが廊下に並べられ、試着しながら選ぶ。
富校の杜が新入生アンケートを実施している。機知に富んだ回答やかわいらしいイラスト、恥ずかしい誤字はもれなく紹介される。
なお、この日はさらに、スプリングコンサートのチケットがもれなくもらえる。
ふつう、3月の最終日曜日。富校吹奏楽部の定期演奏会である。他校生や卒業生のほか、一般客も大勢観に来られる。会場前はオーバードホールの入り口に長蛇の列ができる。富校生は基本的に全員チケットを買いましょうということになっており、「買ったからには」の原則によって観に行く生徒は多い。ただし、春休みの宿題が終わりそうになく、それどころじゃなくなってくるのもこのころである。
3部構成であり、第1部でわくわくし、第2部でうっとりし、最後のPopularステージははじける。
なお、新入生たるものタダでチケットもらったからには観に行かずにはいられない。
「ようし、これからは本気で毎日勉強するぞ」とやる気あふれる生徒が多い。3年生は本当に実現するのだが、2年生はあまり実現しない。
教室に戻ると学習のしおりが配られるが、3年生は1年間の予定に書かれた校内・校外模試の多さにびっくりし、受験生であることを強く実感させられる。
2・3年の始業式が終わったあと。晴れて富山高校に入学し、気分はうきうきである。コーラス部と2年音楽選択者によって歌われる校歌、そして百周年記念賛歌に感動する。クラス編成も発表される。このとき、すてきな担任にあたるかどうかは重要なポイントである。
教室に入ると、横幅いっぱいにひろがった高校の黒板の大きさにびっくりするとともに、中学に入学したときにも小学校と比べて同じことでびっくりしたことを思い出す。
2・3年も、初々しい新入生が入ってきてうきうきであるが、同時に新入部員獲得戦の火蓋も切って落とされる。
入学したての新入生が、立山青少年自然の家に泊まりがけで富校における学習方法(予習・復習の仕方など)をみっちり教え込まれる合宿。夜にはクラス別に各部屋で親睦を深めるレクリエーションの時間もある。2日目の最後には吉峰でバーベキューがあり、毎年これでもかという量の食材が用意されている。
入学式の翌日。富校オリジナルのテストを受ける。入学2日目とはいえ、ついこのあいだ難関をくぐり抜けてきたばかりであり、国数英の3教科などわけはない。春休みによっぽど遊んだのでなければ、みんな高得点である。または、春休みによっぽど遊んだ場合、入学早々学年担任団に名前を覚えてもらえる。
なお、この日は春休みの宿題提出日でもある。さすがに入学していきなり忘れてくるのはまずい。
新入生のおめでとうテストと時を同じくして、2年生は1年生とは対照的に頭を抱える。宿題の提出日でもあり、あまりだしていない生徒はこの日一日気が重い。
完了していない宿題がある者は、この日から連日居残りで宿題をやらねばならない。
同じ日に1年生はおめでとうテスト、2年生は宿題テスト。さらに名を変えて3年生は進学模試である。年を経るごとに気の重くなる名称になっている。
これ以後、3年生には「テストのない月はない」一年間が始まる・・・と言うよりテストのスキマを埋めるためにこの進学模試がある。
第一体育館にて、新入生に教科・部活・生徒会・応援などの説明がある。ずっと座っているのはつらい。このとき、気合の入った部の部長は好印象獲得のために一生懸命になる。1年生は、たいてい放送部の「アナウンス声」と、ESS部の「リアル英語」におどろく。
ふつう、2年生が会長に立候補する。選挙戦が勃発することもあるが、立候補者が一人なら信任投票はなく無投票当選となる。副会長などの役員は当選後に会長が選ぶので、仲良しこよしが集まることになる。
4月中旬から1週間。学年担任団が生徒に贈るスペシャルアンケート。様々な調査項目があるが、メインは一週間の生活の記録である。
富校生は4時間の家庭学習を求められているが、たいてい学年平均値は3時間半くらいである。ただし、2年生におけるこの数値の信頼性は低い。3年生をのぞけば、一般に1年生のこのときをピークに、家庭学習時間は2年間かけて少しずつ減っていく。
なお、この調査用紙の提出期限は絶対的である。忘れた場合には、自転車通学圏の者はたいてい取りに帰らされ、家の遠い者は新しい用紙に思い出しながら書かされ、その日欠席した者は電話にて内容を読み上げることになる。
4月中旬から下旬ごろ。女の子が昼食を抜く日。高校生にもなれば、身長の伸びもおさまり、1mmの増減にも歓喜/悲哀する者もいる。
「土曜講座」と呼ぶ学校もあるようだが、ここ富校では「自学講座」。自学講座は、平日の授業に加え更に授業を展開させたいという教諭陣の意欲のカタマリ。というのも、生徒は毎年春には「自学講座受講希望調査」によって参加不参加の意志を表明するのだが、なぜか参加せざるを得ない。「土曜にも教諭陣に学校へ来ていただくから」との理由で参加費が徴収されるので、教諭陣も必死なのかもしれない。
年10回ほど土曜午前に開かれる60分×3の講座。3講座のうち国語は全員参加で、ほかの2講座は数学2講座・英語3講座の中から自分で好きな講座を選んで受ける。講座の内容は、課題の質問教室や定期考査対策、普段はあまり取り組めないような演習問題など。同じ講座を続けて受けることもできる。講座内容で受ける講座を決める生徒が多いなか、担当教諭で選ぶ生徒も少なからずいる。
高校の授業に四苦八苦している1年生が、ここで安らごうと考えるのは大まちがいであり、全国各地で人々が羽を広げるなか、富校生は地獄の宿題にあえぐことになっている。中間テストの足音におびえつつ机に向かうのである。
5月中旬。たいていは土日を挟んで行われ、週末にも勉強に追われることとなる。学年初めの定期テストであり、意気込みは高い。1年生は初めての本格的な高校のテストにドキドキであり、たいてい問題量の多さにびっくりしつつ時間切れである。
2・3年生などは、分かっていながら時間切れである。
ここで、富山高校の家庭科をなめてかかるのは、1年生の犯しがちな大きな過ちである。伝統的にそうなのか、今の家庭科担当教師がそうしているのかは今のところ定かではないが、予備知識なしの1年生の場合、何もやらなければ赤点必至、こんなもんだろう、程度の勉強では70点台も危うい。
このころになるともう、つい2ヶ月前まで秀才ばかりであったはずの1年生に、数学で10点台をとっちゃうやつとかがでてくる。
なお、テストが終わり、開放感でいっぱいなその日の内に配られるプリントは、次なる実力テストの範囲表である。
5月下旬。富校卒業の大学生がいっぱいやってきて、「あ〜、懐かし〜」などと言いつつ一生懸命授業をする。かわいい先生やかっこいい先生がこないか、やばい先生で授業が他のクラスより遅れないか、の2点に生徒の関心が集まる。
このとき、2年生は彼らとの座談会があり、富校時代の楽しい生活や大学生活の生の声、そして大学受験に際しての心構えや将来の職業について語ってくれる。ただし、その場にいる2年の学年担任団の中には彼らの恩師も含まれ、さぞかし話しにくいものと思われる。
6月中旬。上記のような楽しい行事の直後、日曜をはさんですかさずやってくる。国数英、それぞれ数冊ずつの参考書・問題集から出題される。3教科すべての範囲を合計すると300ページは軽く超えていく。
ここでものを言うのはゴールデンウィーク中の家庭学習である。どの参考書も授業では扱わないので、やってこなかった場合はひらきなおろう。
6月中旬。富校生がもっとも燃え上がる行事。特に3年生は富校生活のすべてを賭けており、意気込みがすさまじい。
それぞれに応援練習や衣装縫製、デコレーションパネル制作などでスケジュールがいっぱいになる。特に壮絶なのは衣装係であり、こりにこった団の係などは、友達の家での徹夜作業も朝飯前となる。
本番が近づいてくると放課後は、リーダーが教室で応援の計画を練ったり大道具をつくったり、衣装係が廊下で小物づくりや縫製をしたり、デコレーション係が第二体育館のピロティでパネルにペンキを塗ったりと、3年生は授業の疲れをものともせずに活動する。
クラス単位で団に所属するので、クラスの団結が深まる。また、たいてい学年ごとに各団2クラスずつなので仲良しクラスが誕生する。
終了後、3年生は疲れも忘れて、その日の打ち上げで思い切りはじける。また、この日を境に、3年生は本気の受験モードに突入していく。
実力テストのことであるが、3年生だけは「進学模擬試験」と言い、国数英の3教科に加えて2日目に理科社会が加わる。
英語100分、数学120分、お昼をはさんで国語100分というスケジュール、時間内に解けそうもない問題、または時間があっても解けない問題、などは健康に良くない。
夏には冷房として稼働する。暑いと設定温度を下げる者と寒いと設定温度を上げる者によって争いが繰り広げられる。また、冷風があたる席とあたらない席を巡る席替えも重要となる。概して、立っている教諭が涼しく感じるためには、座っている生徒は寒い。
理系の三年生にもなるとガスで涼しくなる理由を説明できる者も現れる。
7月初め。中間にはなかった保健が加わる。家庭科もここで仲良く加わればいいのだが、中間から顔を出している。
テストの日程では、どの教科とどの教科が組合わさるかが生徒にとって重要であるが、英語に化学、そして家庭科の3教科あたりが組み合わさると、その日の前日は暗記ばっかりである。
期末テストが終わるや否や、休む間もなく開講される。全員参加。午前だけで終わるというものの、毎日予習の必要な国数英が続くため、普段の授業よりも大変という話もある。2年生になると、さらに地歴・理科から一教科追加となり、地獄度を増す。
このころすでに夏休みの宿題が配られ、暑い毎日に寒気をもたらす。すべて期日までに提出しようと思うなら、配られた日からすかさず本気で取り組まなければならない。
なお、補講の最後には確認テストなるおまけが付いてくる。補講最終日が、夏休み宿題の一部の提出日になっていることもある。
海の日前日。1・2年生はいよいよ待ちに待った夏休みの到来であり、気が気ではない。たとえ宿題があろうとも、予習のない日々というだけでうれしくてしょうがないのである。
一方、3年生はこのあとも7月いっぱい補講が続くので、終業式に抱く思いは「きょうは補講が休みでうれしいな」に過ぎない。
年によって違うが、例年終業式の前後。夏のイベント最高峰に君臨し、毎年尋常ならぬ盛り上がりを見せる。
汗を流すのは野球部員だけではない。スタンドを見回せば、勇ましい応援団、踊るチアリーダー、懸命な吹奏楽部員、駆けつけた富校生、息をのむ教職員、近所のおじさん、などがいるのだ。炎天下の試合となると、顔色の悪い女の子が多く見られるが、日射病かと思ったらそれはたっぷり塗られた日焼け止めクリームである。
一年のうち、もっとも心安らぐ日々。月日がたつのは早いが、宿題が減るのは遅い。夏休みにおいて「宿題やっとる?」とは、会話のでだしに、すれ違いのあいさつにと用いられる頻出表現である。
暑い中家で勉強していると集中力がにぶるので、冷房のきいた百周年記念館には連日生徒が殺到する。また、教室で勉強する生徒もいる。
3年生はここで一気に学力を伸ばさんとがんばる。富校3年生の夏休みは体育大会を春に終えているため、本当に伸びる。
7月末。富山県の名峰、立山連邦は室堂山荘での1泊2日の実習。実は立山は地球史の博物館のようなところで、本格的に学べば地球を理解したと言っても過言ではない。植生・地層・地獄谷の化学成分など、生物や地学や化学といった分野を中心に野外学習をおこなう。が、それでも盛り上がるのは夜であり、理数科の団結をさらに高めてくれる。
なお、ムード満点の星座観察を逃す手はない。逆に悪天候なら雷鳥に会える。
7月終わり。富校コーラス部による定期公演。スプリングコンサートと同様に、富校生は全員チケットを買いましょうなので、「買ったからには」の原則が働く。夏休み最初のイベントでもあり、観に行く生徒は多い。男子部員が少ないので、応援に駆り出される男子生徒もいる。
7月終わりから8月初めにかけて、各部の合宿がある。行き先は様々であるが、宿泊設備の整った富校のセミナーハウスに泊まるところもある。大会や発表を前にした強化合宿もあれば、部員の親睦を深める和やかな目的のものもある。どちらにしてもやっぱり盛り上がるのは夜であり、部の結束はさらに強まる。
3年生のみ、8月20日ごろの2日間開催。これより前にやはり2日間開催で外部の模試があり、富校3年生のお盆は試験に始まり、試験に終わる。直後に補講(後半)が始まる
夏の補講の第2弾であり、夏休みの後半、8月下旬に開かれる。提出期限が補講初日の宿題も多く、世間が夏休み気分満点のなか、自分たちはすでに2学期気分が始まってしまうのが悲しい。
夏期補講中におこなわれる。宿題の提出日でもある。万全の体制でこれに臨める者は少なく、裸一貫で挑むしかない者は多い。
夏休み中の土曜日にある社会人との懇談会。細かな開催時期は決まっていないが、富校卒業生の方から、進学・進路・職業についての話が聞ける。社会人の仕事に対する情熱を知り、進路が定まる者もいる。
補講終了の翌日なので、2学期の始まり感に欠ける。とはいえ、この一区切りに「2学期からは勉強がんばるぞ」と、1学期にも言っていたような決意をする生徒は多い。
燃えまくった体育大会が終わり、3年生が「1・2年生は文活準備で楽しそうだねー」、などと高校生活の余生を語りだした頃・・・。ホームルームの時間に先生が封筒の束を持って教室に入ってくると、クラスは得も言われぬ雰囲気に包まれる。
誰かがそっとつぶやく。「ねぇ、あれ・・・」「おい、なによあれ」「せんせー、しゃなんけー?」先生はうれしそうに答える。「センターの願書だぞー」「ギャー」。
9月中旬、2日間に渡って開催される。富校生がもっとも活き活きする行事。3年生はお客さん、1・2年生が文化的な発表をする。
文化部の発表や個人発表などももちろんあるが、富校の文活といえば、やはり各教室が展示物で埋め尽くされるクラス研究だろう。
6月頃から、1・2年の各クラスは研究対象となるテーマを定め、文活での発表に向けて調査・研究に取り組み始める。夏休みともなると、市立図書館では富校生が専門書をあさり、校内ではアンケートも実施される。ここで重要なのがクラスの士気であり、やる気あふれるクラスだと、忙しさが2倍であるが日々の充実感は2乗である。補講期間(後期)からは、教室や廊下などでガンピへの書き込みが始まり、歩きにくくなる。本番が近づくと、これに大道具や看板制作も加わってくるので足の踏み場がなくなる。
クラスの団結がまたまた深まる行事である。
9月末。3年生のみ。楽しかった9月の終わりを告げる不吉なテストである。この時期、まだまだ追い上げの足りない富校生は点数も不吉である。
このころ、1年生は翌年度以降の文系理系を選択する
1年生にとっては人生を左右しかねない重大な選択のため、毎日このことで頭がいっぱいであり、学年担任団や部活の先輩に相談しまくることになる。
このとき1年生は地歴・理科の選択もいっしょにしなければならない。初めは興味や関心で選んでいくのだが、先生の「世界史、日本史は難しいぞ」の一言により、突如地理が人気を博すようになる。
9月下旬。楽しくてしょうがない行事の一つ。日々の勉強から解放される二日間。トレッキング、クラス対抗レクリエーション、自然観察やバームクーヘン作り、飯盒炊爨ともりだくさん。
やはり宿泊の華は夜であろう。消灯後にすぐに寝たのかは果たしてわからない。
2年宿泊と同じ頃。毎年行き先はアンケートによって決まるが、まあ、だいたい似たようなところへ行くものである。東京ディズニーランドに200票はいっても、たぶんいけない。金沢と飛騨高山が定番であり、前者の方が人気が高い。
10月上旬。体育大会や文活といった大きな行事を抱える前期に比べると、後期は穏やかなものである。なお、このときの役員には1年からも2名入れることが通例となっており、自分たちから役員がでることに、1年生は世代の移り変わりを感じさせられる。
10月中旬。1年生もそろそろ富校のテストに慣れてくる頃であり、結局は日々の予習なんだ、ということに気づく。「ようし、予習はしっかりやろう」と思うか、「じゃ、無理だ」と思うかはそれぞれである。
テストが終わり、ほっと一息ついたその日に配られるのは、やはり実力テストの範囲である。
10月下旬。グラウンド・第一体育館・第二体育館をフルに使って、さらには太郎丸公園まで使って、全員参加で丸一日おこなわれる。クラスごとに、サッカーやテニス、バスケットボール、ソフトボールなどの種目に生徒を編成し、各種目の順位による得点で競い合う。どの競技もトーナメント戦であり、負けてしまうと自分のクラスの応援に回るので、各競技の決勝戦は応援、観客がひしめき合うなかでの試合となる。
11月中旬。このころはめっきりと行事もなくなり、自動的に勉強に気合を入れることになるため、「いっちょがんばってみるか」という気になりやすい。2年生はここで初めて地歴・理科が実力テストに加わるのでちょっぴり不安である。
1・2年生の実力テストと時を同じくして3年生は進学模試。いよいよテスト内容が「既習全範囲」となる。このため、これまで範囲の予習をしっかりこなして点を稼いできたタイプがテスト対策法を失い、ちょっと苦しくなる。逆に長期記憶への定着を優先させてきた者にとってはこれからが本領発揮である。
12月初め。寒くなってくると身も引き締まるのか、気合が入りやすい。ただし、テストの結果とはあまり関係がないことが多い。
期末テスト終了後、やはり間髪入れずに開講される。年末年始で忙しいというのに、短い期間とはやけに不つりあいな量の宿題も配られ、冬休みに向けて夢も希望もなくなる。
3年生のみ。つい先日期末テストが終わったばかりの時期である。そうでなくとも3年生はこのほかマーク模試やら大学別模試やら、テストだらけである。3年生になってから毎月テストをこなしてきたが、このころには毎週テストになってしまう。
クリスマス直前。たとえ補講中の予習が大変であったとしても、この時点で冬休みの宿題に手をつけてないとしたら、前途は暗い。
なお、きたるクリスマスの幸せ度は、天と地球の裏ほどの個人差がある。
クリスマスにお正月と、楽しい楽しい冬休みであるが、もっとも富校生らしい冬休みとは、年末年始にかまうことなく、終始一貫して宿題に明け暮れる毎日である。
暖房のきいた百周年記念館で勉強する生徒はいるが、寒気のする教室で勉強する生徒はいない。
3年生はここを怒濤の総仕上げとして、完璧な2週間を送る。
あっという間の短い冬休みは容赦なく終焉を迎え、再び予習の日々がやってくる。ただし、3年生にしてみれば、そんなものとはレベルが違うのである。なんと言ってもセンター試験がいよいよいよいよ目前に迫っており、精神を統一せねばならない。
年末年始の世間の波に全く飲まれなかった者が勝つ。ここでしっかりと3学期のはずみをつけたいところなのはやまやまであるが、あえなく粉砕する羽目になりやすい。
1月半ば過ぎの2日間と納会が1日。別名地獄。1年生と柔剣道部員が、自分の選択している武道ダンスの練習を「早朝に」おこなう。その週の金曜日午後からは納会として、試合・発表会を行う。納会後には校訓「慎重敢為」の手ぬぐいがもらえる。
7時20分に必ず「準備万端で集合完了」のため、さらに早い時間に登校せねばならない。この時期、富山は雪である。1時間以上かけて通学している生徒は、この時期大いに忍耐力を成長させる。
ちなみに、二グループに分かれて二日ずつ計四日間行われる寒稽古の間、他方のグループは数学の授業を受ける。
1月半ば。富校3年生が最も緊張し、胸が高鳴り、精神が昂揚し、顔を赤らめ、よくしゃべるようになる驚異の2日間。
直前の登校日に学校で開かれる「センター試験激励会」は、恐れおののき3年生の不安を半減させ、武者震い3年生のお祭りムードを4乗させる。不安派とお祭り派の隔絶は大変なもので、前日の行動、食事の摂取量、睡眠時間などでスグ分類できるだろう。当日の朝などは双方ドキドキのお目覚め間違いナシであるが、やはり紙一重のところで表情には「はらはらドキドキ」と「わくわくドキドキ」の差がでている。
会場は年によって富山大学の五福キャンパスになったり杉谷キャンパスになったり。試験開始の1時間前になっても姿を現さない生徒がいると、担任団は気が気でなくなる。また、本番試験特有の長〜い休み時間には大答え合わせ会議がいたるところで開催され、果てしない議論が繰り広げられる。試験2日目に、新聞に載った1日目の解答を見てから会場に来る生徒もいるが、富校進路指導部では「見るな」の方針が掲げられている。
この「見るな」の方針は試験翌日の登校まで続いており、自己採点はみんなそろってやりましょう、ということになっている。この日を「センター試験3日目」と言い、登校から放課後にかけて、お祭り騒ぎの盛り上がりは最高潮に達する。
1月の終わりごろ。3年生はこの日、自分の受験する大学の願書と募集要項を持って登校する。忘れたら即帰宅し即持参。午前中にはいつも通りの授業があるが、午後には視聴覚室に大学地域ブロックごとの机が並び、担任団は穴が空く寸前まで入念に一人ひとりの出願書類を凝視する。前期と後期の願書チェックを終えると、続いて特別校内開局の郵便局職員の方々の手により書留発送。
ゆりかごから墓場までと名の高い富校の願書受付。慎重にして盤石なるこの手作業は、全員完了までなんと5時間にも及ぶ。
ちなみに中部高校では勝手に最寄りの郵便局へ持っていきなさい、であり、いたれりつくせりで育つ富校生には信じられない。
2月上旬。ひらたく言えば3年生を送る会である。
1・2年生はクラス単位で「出し物」や「会場準備」、「招待状作り」などの役割を分担し、3年生に喜んでもらうために工夫をこらす。役割は、希望が重なればくじ引きで決めるのだが、「出し物」などはあまり人気がないことが多い。ただし、「出し物」をねらって意気揚々なクラスもある。そんなクラスに入りたいものである。
そして、なんと言っても最も見どころとなるのは、3年の学年担任団による出し物である。普段はとってもまじめで厳格な担任団が、この日ばかりはそろって芸人になる。担任団にとって最強最大の行事と言っても過言ではなく、連日猛練習を積み重ね、当日はこりにこった衣装を身にまとって、一大ショーをやるのである。3年生は、担任団の熱い思いに奮起せずにはいられない。
2月はじめから半ばにかけてピークを迎える。関東や関西、金沢試験会場へと富校生は出かけていき、教室が静かになり、さびしい。
2月中旬。ただでさえ暗い雰囲気の漂う冬の寒空に、重苦しいカーテンがのしかかるようである。もちろん、実力テストおなじみである「何もやらないからこそ真の実力がためされる」などと言って砕けていく生徒もしっかりいる。
2月下旬。ほとんどの富校生が全身全霊をささげて、3年ぶりにえんぴつを削るとき。受験前夜には学年担任団で組織される特別派遣隊からのガンバレコールがホテルの電話にかかってくるので、晩ご飯への外出は慎重にタイミングを計るとよい。さらに翌朝、多くの富校生が受験する主要大学では特別派遣隊が大学校門などで待ちかまえており、やる気満々にさせてくれる。
2月下旬から3月。学年末と言っても1学期にやったことなどは出題されないので、要はふつうの定期テストである。
定期テストもこれで最後であり、希望に満ちていたいところであるが、おなじみの補講はやっぱりなくならない。
3月上旬。富校は伝統的に卒業生一人ひとりに卒業証書を手渡しし、校長先生とのカタイ握手がもらえる。楽しかった富校生活もここで終わりを告げるわけであり、淋しさでいっぱいである。同時に、大学の合格発表がこのころであり、ハラハラでいっぱいでもある。
正面玄関前の前庭には1・2年生がずらりと並び、吹奏楽による「百周年記念賛歌」と「蛍の光」に包まれながら3年生は母校を巣立っていくのである。おめでとう。
やってきましたおなじみの予習地獄。木々が、花が、虫が、そして大地が、皆でうららかな春を迎えようとするなか、富校生の毎日は冬である。
補講期間中、ひょいと舞い込んでくる幸せな2日間。ああ、今ごろ中学生は必死に問題を解いているんだなあ、かわいいかわいい。などと感慨にふけっていると楽しくてしょうがない。
合格発表で喜びの声を上げた直後の卒業生が体験談を語る。卒業生が大学のレベルごとに十ほどのグループに分かれ、1、2年生は希望グループに入る。卒業生が自己紹介した後、質疑応答が行われる。質疑応答だけでないのが重要な点で、在校生が思いつかない細かい点まで聞くことが出来る。各グループには、「卒業生が話しやすいように」との配慮から3学年担当でない先生がつく。代わりに、在校生は変な質問をしにくくなる。
なお、自分の仲良し・お知り合いの先輩の話を聞くと、より面白い。
3月下旬。仲良しクラスでは別れを惜しんで文集やクラス誌が発行される。と、担任もうれしい。
もっとも苦しい冬休みに比べれば、春休みは多少ゆとりがあり、季節の陽気も手伝ってこの日はみんな表情が明るい。ただし、ゆとりがあるとは言え富山高校らしい宿題の量はゆずらない。
夏休みに次いで富校生がもっとも活動的になる時期。大学見学のほか、春スキーに行ったり、ディズニーランドへ行ったり・・・。ただし、学割をもらうときは大学の見学が最前面に押し出される。
富校生の一年もこれを区切りに再び桜の季節へとめぐっていくのであった・・・。